different point of view


受け取り方のいろいろ。

インダストリアルデザインとして考える物作りの企画は今までは5〜10年先を
考慮してデザインを進めてきている。今でもそういうところもまだまだある。

アドバンスデザインという言葉も最近では少し聞き慣れてきた。
身近で言うならば携帯電話のアドバンスモデルは一般的にも公開され、その
デザイン過程を見ることが出来る場所が一般消費者に近い存在になってきている。

工業デザインについて触れてみると、今ではその「商品寿命」は短くなり、
開発期間、販売期間も共に比例して短くなる。
特に電化製品のデザインでは「スピード」が要求されることも多い。

最近感じることとして、「定番」的なデザインが少なくなってきてしまっていること。
簡単に言うとず〜っと愛せる流行に左右されないデザイン物が減ってきている。

これは非常に残念!
カタチ(デザイン)が良く見える物でも蓋を開ければ素材が良くなかったり
または、独創的ではなく流行の中でしか生きられないデザイン的な物があふれてきた。
流行が終わるとポイッ! こんなに悲しいことは無い。

新製品が続々と出る、すると前の型はあっという間に「古くさい」という結果に
なってしまう。特に90年代〜はそんな気がする。
それ以前は作る過程においても試行錯誤を重ね、素材を研究しそれなりの時間が
かかっていたため、モノにたいする価値観が高かったのだと思う。

進化に伴ってもちろん便利になった部分は多々あるが、そのお陰で物作りに対する
姿勢が薄れているのも現状。デジタル化によって「貴重」という感覚がズレて
きているところもあるのかもしれない。
簡単にモノが作れるようになって「価値」が違う見え方になっている。

しかしこのお陰で、一部のユーザーの「モノを見極める力」もアップしてきている。
沢山あるモノの中から「目利き」が良い物を時間をかけて探し、それに対して
納得のいくコストをかける。そういうところから見つかったプロダクトは質も良く
息が長いはずだ。もちろん低価格でも良いモノが出てきている事もたしか。

作る側と売る側はどのようにして、そのような価値観の中で「本当の価値」を
見いだせるのか、または伝えられるのか?ここでも試行錯誤は続いている。

いつもは1から作ることが多い中、作ったモノをどの様にして伝達するかという
立場からもプロジェクトのお手伝いをさせて頂いている。
仮にモノが良くても、伝わらなければユーザーの手元には届かない。
そう、心に「グッ」とくる表現が必要になる。

機械や文化など世の中が進化しても人の気持ちはそうそう機械的になることは無い。
感じ方が鈍くなってきていても、それを醒ます方法はまだまだありそうだ。